レオンハルト・ガクロム

 レオンハルト・ガードナーは英雄である。
 それはガードナー家の使用人でマカ サプリあり侍女頭であるマーサも認めるところだ。
「ねぇね亜鉛 の サプリぇ見た?」
「何を?」
「何をってあなた!この間の練習試合よ!」
 きゃあきゃあと出先の店先で若い娘達が黄色い声ではしゃいでいる。
「レオンハルト様の勇姿!格好良かったー!亜鉛
「いいなぁ、わたし抽選が外れちゃって訓練場に入れなかったのよ」
「試合見学の市民への開放は教皇聖下のご提案でしょ?本当に良かったとは思うけど抽選式なのだけが玉に瑕よね」
「仕方ないわよ!すごい人気だもの!」
 彼女達はうっとりと目を細めた。
「レオンハルト様の格好いいこと」
「強いのにお優しくて」
「爵位を賜って偉くなられたのに気取ってなくて」
「うちの亭主と交亜鉛の効果換したいくらい」
 きゃー、と歓声があがる。
「あなたそれはちょっと図々しいわよー」
「いいじゃない!ちょっとした願望よ!」
「まぁでも想像しちゃうわよね、平民出身だからワンチャンあるかもって」
 ほう、と恋する瞳でため息をつく。
「そういえば新しい姿絵が出てたのよ」
「やだ!早く言ってよ、買いに行かなきゃ!」
「あなた新婚でしょ?そういうの旦那さんは許してくれるの?」
 その質問を問われた女性は気取った様子で髪の毛をふぁさっ、と手で流した。
「絵付きのお皿を買うのは止めらdhaれたわ!」
「あー…」
「それはねー…」
「高いし嵩張るからダメだって!あの紙とは違う高級感がいいのに!!」
「せめて目に焼き付けときましょうよ」
 そう言って1人が店の一番目立つ位置にでかでかと飾られた平皿を指差す。その皿には華美な装飾が施されており、その中央には剣を抜いたレオンハルトの絵がでん、と描かれていた。じつに実用性が無さそうな皿である。
「………」
 マーサは四十肩ぎみの肩をとんとんと叩きながらその光景を白けた目で見る。マーサの守護精霊の小鳥もしらっとした目で見ていた。
「あいよ、マーサさん!おまちどう!」
 マーサが用があった青果店の店主がやっとお目当ての果物を手に戻ってきた。店先に在庫がないか亜鉛 サプリらと取りに行ってくれていたのだ。彼はマーサの視線の先を追って「ああ」と納得したように頷いた。
「すごい人気だよなぁ、あの店の前はいつも若い娘さんでいっぱいだよ」
「恋は盲目とは言うけどねぇ、夢見すぎじゃないかしら」
「何を言うんだい?実際夢の中から出てきたような人じゃないか。実は俺、いつだったか仕入れに出かけた先で助けてもらったことがあるんだよ。野良精霊に襲われてよ。いやぁ、評判通りのいい男だったよ」
「……そうかい」
 マーサは果物を受け取って、心中だけでつぶやく。
(実際近くにいるとかなり無愛想な人だけどねぇ)
 やれやれとため息をつくとマーサは重い足取りで屋敷へと歩き始めた。

 マーサの勤める屋敷の主人であるレオンハルト・ガードナーという男は裏表の激しい人物である。
 表向きは非常ににこやかで紳士的な好青ゴーヤ年だ。しかし身内だけの場や屋敷の中になると、とたんに寡黙でぶっきらぼうでとにかく重苦しい空気をただよわせた暗い人物に変貌するのであった。どちらが素なのかなど確認する必要性も感じない。
「ああ、マーサ。旦那様がお呼びだったよ」
 重い荷物を抱えて帰ってそうそうに、同僚の男はそう告げた。醜いあばた面のその男は名前をジェイドという。
 小さい身長にずんぐりむっくりとした体格、瞼の重い目にぶつぶつとできものの浮き出る浅黒い肌。どこからどうみてもゲコゲコと鳴くあれにそっくりの男だ。ジェイドという名前の由来なのだろう瞳の緑色だけが美しいが、その美しさがかえって目玉を強調してぎょろっとした印象を与えている。その首には守護精霊の瞳の色と同じ緑の蛇がとぐろを巻いていた。
 見た目同様の陰気な男で使用人達の集まりにも全く参加しないことで有名だ。しかし彼は主人からの信頼をもっとも得ており執事長としてこの屋敷を取り仕切っていた。
「一体なんの用だかねぇ」
 ジェイドに向かって話しかけたつもりだったが、彼は気がつかなかったdha epa dhaのか無視したのかそのまま無言で立ち去ってしまう。
 マーサはため息をつくと荷物を置いて主人の部屋へと足を向けた。
 深い赤色の絨毯のひかれた廊下を歩く。屋敷の中はどこも綺麗に掃除をして換気もされているはずなのに主人の気質にでも倣っているかのように重苦しい印象を受ける。
 必要最低限の用事以外の来客のない屋敷である。もう少し人の出入りがあれば明るい雰囲気を取り込めるような気もするのにあの人嫌いの主人にそのような進言のできる関係性の使用人などはいない。
 大きく重厚なドアをノックする。物理よりも心理的な重みのあるドアの向こうから入室を許可する声が響いた。
「失礼致します」
 なるべく音を立てずに部屋の中に滑り込むと、屋敷の主は執務机に腰を掛け、いつも通りの仏頂面で書類を睨んでいた。
「マーサ、弟子をここに招くことになった。部屋を準備してくれ。位置は…、そうだな、俺の私室の近くにしてくれ」
 目も合わせず淡々と用件だけを告げる。
(弟子……?)
 そんなものがいたのか、とは勿論口に出さないし出せない。
「性別はどちらでしょう?何か特別に用意するものなどはありますか?」
「性別は女だ。年齢は12。普通に寝泊まりできるdha epaように整えてくれればいい」
「承知致しました」
 頭を下げながら「女かー」とマーサは内心で嘆いた。この主人に若い娘は鬼門だ。一体何度若い娘がこの屋敷に期待に胸を膨らませて訪れ、期待を裏切られて去っていったことか。今残っている使用人は年嵩の者か、はなからそういった興味がない者だけだ。
(まぁ、この人自身が見つけてきたのなら大丈夫か)
 半ば自分に言い聞かせつつ、厄介なことになりませんように、とマーサは祈った。
アントシアニンの効果亜鉛の効果ゴーヤ チャンプルー

「ミモザ、どアントシアニン

「ミモザ、どうしてこんなことをするの?」
 悲痛な表情でステラはそう叫んだ。視線の亜鉛 サプリ おすすめ先には瓜二つの少女がいる。しかしその顔はステラとは違いどこか硬質で人dha epa dhaを見下すような冷たい目をしていた。
 その瞳は、紅色に染まっている。
「どうして?本当にわからないの?」
 彼女は呆れたように首を振った。
「何度も言ったのに!何亜鉛の効果度も何度も何度も何度も!お姉ちゃん!貴方はやり過ぎたの!!」
「やり過ぎたって、一体何をっ」
「僕が間違ってるって思ってるんでしょ、自分は正しいと思ってる!」
 ミモザは涙をはらはらと流しながら笑った。
「だから僕の言うことを無視するんでしょ?」
「無視なんてしてないわ、ミモザ!お願い!お姉ちゃんの話を聞いて!!」
 ミモザは首を振マカる。何度も、何度も。
「……もう遅いよ」
「ミモザ?」
「お姉ちゃん、あのね、……っ!?」
 そう言った瞬間、ミモザの口から血が溢れ出た。
「ミモザ!!」
「なん、で……?」
 その瞳は驚きと焦燥で満ちている。彼女が地面に倒れ伏すと鮮血は口からだけでなく、背中からも流れていることがわかった。
 背後から切り付けられたのだ。
 ステラ達は辺りを見渡したがどこにも人影はない。
「ああ」とミモザは絶望の吐息を溢した。
「貴方も、僕を切り捨てるのですね、……様」
「ミモザ!?ミモザ!!」
 ステラが駆け寄り体を亜鉛 サプリ抱えるが、その体はもう熱を失い始め、意識は消えていた。
 ぱたり、とミモザの腕は地面へと落ちた。

 そこでミモザはガバッと布団から跳ね起きた。
「え、し、死んだっ!」
 いや、正確には死んでいないが。
 死んだのはゲームの中の『ミモザ』だ。
(思ったより意味深な死に方してたな)
 てっきりもっとこう、悪いことしやがってー、うりゃあ、サクッ、みたいなあっさりした死に方かと思っていた。
「っていうかもしかして黒幕みたいのがいる?」
 思わずチロに確認すると、チロも夢を共有していたのだろう、もっともらしく頷く。
「チチッ」
 殺意高めの相棒が、誰だか分かり次第殺してやろうぜ、と言ってくるのはいつものことなので今は横に置いておく。
(一亜鉛 サプリ おすすめ体誰に『ミモザ』は殺されたのだろうか?)
 いつも肝心なところがわからない。しかしゲームのミモザは何者かに裏切られた様子だった。つまり、ミモザには仲間がいたのだ。
(何繋がりの仲間かはわからないけど)
 ゲームのミモザの行動を可能な限り思い起こしてみる。
 ミモザは嫌がらせキャラだ。そのミモザの仲間ということは、つまり主人公達の行動をよく思っていない人間が他にもいたということになる。
 しかしミモザの嫌がらせを思い起こしてみても、正直いまいちピンとこない。
 ミモザの嫌がらせは最初は学校の卒業試合でステラに敗北し、それに対して嫌味を言うところから始まる。そこから道中でステラ達に対し「そんなに野良精霊をたくさん狩るなんて酷い」とかいちゃもんをつけてステラから魔導石を奪ってみたり、試練の塔に着いた際に「そんなんじゃ中には入れられない」などと言って喧嘩をふっかけてきたりする。
 正直序盤のマカ サプリ嫌がらせなど大した行為ではない。後半になるほど戦いを挑んでくる回数こそ増えるが、ミモザは雑魚キャラなので経験値稼ぎ要員として扱われていたように思う。
 うーん、とミモザは首を捻った。
「もしかして僕って重要人物だったり?」
 言ってみただけだ。
 チロはさぁ?というように首を傾げてみせた。
亜鉛 の サプリゴーヤ

「んーー…」  亜鉛 の サプリ

「んーー…」
 メモアントシアニンの効果帳を片手に首を傾げるミモザの足元には、おびただしい量の野良精霊の遺マカ と は体が散乱していた。
 あれから数刻ほどの時間が経過していた。その間延々と野良精霊を狩り続け、ミモザはある程度チロの扱い方を習得しつつあった。
 とはいえそれはゲームの中の『ミモザ』が使っ亜鉛 サプリ おすすめていた技術をなんとかおさらいし終えた、という程度のものでしかないが。
 記憶の中で把握した技術を書き出したメモ帳に、実際に行えたものはチェックをつけていく。
 達成率は50%といったところだ。
「まぁ、初日だしこんなものか」
 メモ帳を閉じ、手とチロについた血を振り払う。ふと思いついてかがむと野良精霊の遺体に手を伸ばした。
 その白魚のような細い指先で遺体を容赦なく探ると、ミモザはマカそこから白い結晶を取り出した。
「お小遣い稼ぎ程度にはなるかな」
 それは魔導石である。
 ゲームでも野良精霊を倒すとドロップし、売ることでお金稼ぎができるシステムだった。
 そう、魔導石の正体は精霊の核である。今市場に出回っている物はこうして野良精霊を狩って手に入れた物や、もしくは墓を建てるという文化すらなかった太古の時代にあちらこちらに埋められたり遺棄されていたのであろう守護精霊の物を発掘した物であった。
「皮肉な話だなぁ」
 悪質であると禁じられている守護精霊を切り捨てるという行為。しかしこれにより野dha epa dha良精霊が発生し今は貴重なエネルギー源となっている。生活を便利にするためにあらゆる場所で魔導石が用いられている現在において消費される量はすさまじく、『過去の遺産』は確実にいずれ枯渇するだろう。今生きている人の守護精霊も死ねば魔導石として利用されることになるとはいえ、毎日の人が死ぬ量よりも魔導石の消費のほうが上回っている以上それは避けられない現実であった。それでも国と教会が守護精霊の切り捨てを禁じるのはその捨てられた精霊の種類によってどのような生態系の変化、あるいは突然変異が生まれるかが予測できないからだ。しかし野良精霊をエネルギー量確保のために養殖するという考えは宗教的、倫理的観念から現状では難しい。
 結局のところ、今いる野良精霊亜鉛の効果達を絶滅させず、人に危害が加えられない程度の数に抑えながら自然環境の中で保存し適宜必要量を採取するという、いうなれば放し飼いでの養殖のような形で今は落ち着いている。
 この森の中は法律上野良精霊を狩って良いエリアである。特例はあるが一般的に一人が一日に狩っても良い野良精霊の数は20匹まで。
 ミモザが今狩ったのは16匹。全く問題ない範囲である。
 遺体の中からきっちり16個の魔導石を回収し、ミモザは立ち上がった。
 日は少しづつ傾き、西の空が赤色に染まり始めている。
 さて、暗くなる前に帰ろうとしたところで、
「それは、狂化しているのかい?」
 そこで初めてミモザは人に見られていたことに気がついた。
dha epa dhaゴーヤ亜鉛 の サプリ

 髪の毛をわし亜鉛の効果

 髪の毛をわし掴まれた。
「…マカ と は…いっ!」
 クロムの効能声をあげるが止まればどんな目に遭うかわかからない。ぶちぶちと引き抜かれる音にまかせてミモザは走り続ける。
「はぁっ、はぁ……っ」
 また石が飛んできて亜鉛 サプリ足や背中、肩などに当たる。
「……あっ!」
 ちょうど踏み出した足に投げられた石があたり、ミモザは転んでしまった。手に持っていたランチボックスが地面に転がる。
 ミモザは地べたに座り込んだまま周囲を見渡した。お昼時のせいかみんな家にこもっているのか、それとも畑へと出かけてしまっているのか、人影がない。
(誰か……!)
 叫びたくても声が出ない。恐怖のせいだ。ミモザは弱いdha。前回は完全に身構えており、やることをあらかじめ決めていたからなんとかなったが、ふいに訪れた恐怖に恐慌状態に陥っていた。
「やっと捕まえたぞ」
 びくりと身を震わせる。振り返るとアベルが怒りに目を燃やして立っている。
「てめぇ、この間はよくもやってくれたな!」
 そのまま至近距離から手に持っていた石をミモザへ叩きつける。
「……っ!」
 鋭く尖った石はミモザの目の上あたりへとあたり、皮膚を切って血が流れた。
「なんとか言えよ!お前のせいで俺たちは全部めちゃくちゃだ!」
 ミモザのせいではなアントシアニンい。自業自得だと言いたいのに、ミモザの喉は震えた呼吸をか細く吐き出すばかりで声が出ない。
 学校生活の数年間でミモザの中に植え付けられた恐怖がミモザの身体を動かなくしていた。
 そこからはもうリンチだった。4人に囲まれて石を延々と投げつけられる。
 ミモザは頭を守ってうずくまるしかできない。
 ミモザの前方に家があった。声をあげれば届きそうなのに届かない。誰か出てきてくれないかと願うがそんなに都合の良いことは起こらない。
 いつだってそうだった。いままでずっと。
 閉じられた教室の中で誰も助けてくれなかったように、今も誰も助けてくれない。
 変わったつもりだったのに、ミモザは何も変わらずうずゴーヤ チャンプルーくまるしかできない。
(誰か)
 手を地面へと這わせる。何かに縋りつきたい。
(誰か来て……っ)
 気づいて欲しい。ミモザの存在に。
 涙で歪んだ視界に、転がるランチボックスがうつった。
 守らなきゃ、漠然と思う。これを届けなければいけない。だってあの人が待っている。
 ミモザを無価値ではないと初めて言ってくれた人がお腹を空かせて待っている。
「レオン様……」
「え?」
 異母兄の名前にアベルの手が思わずというように止まる。弾幕のように飛んできていた石が一瞬止まり、その隙にミモザは地面の石を掴んだ。
「な、なんだよ……」
 そのまま手を振り上げたミモザに怯むようにアベルは後退る。
 そのアベルを無視して背中を向けるとミモザは石を投げつけた。
 前方に見える、家の窓へと向かって。
 ガシャンッ、と派手な音と共にガラスが割れる。
「……なっ!」
「こらぁ!クソガキどもゴーヤ チャンプルー!何してくれやがる!!」
 家主の男は窓の割れた音に家の奥から姿を現し、状況を見て取って怒鳴った。
クロムの効能アントシアニン

 かくしてゴーヤ

 かくして、その少女は主人自ら送迎を行うという好待マカ遇で屋敷に足を踏み入れた。
「………っ!」
 その姿にマーマカ サプリサは息を呑んだ。マーサだけではない。主人の弟子の姿を一目拝もうと並んで出迎えた使用人達みんなが目を見張った。
 主人のレオンハルトは美しい男だ。それはマ亜鉛 の サプリーサも認める。そんな主人と並んでもなんら見劣りしないどころか、それ以上に可憐で美しい現実離れした少女がその隣には立っていた。
 美しい飴細工のようなハニーブロンドの髪に海の底を思わせる青い瞳は何かを憂うように伏せられ、長いまつ毛がそれを扇状に繊細に覆っていた。肌は雪のように白く透き通って唇はふっくらと桜色に色づいている。まるで職人が丹精込ゴーヤめて作った陶器でできた人形のように繊細で作り物めいた美しい少女だった。
 少年のような地味で露出の少ない服装だけがその容姿を裏切っている。
「弟子のミモザだ」
「よろしくお願い致します」
 主人の簡潔な紹介に続いて粛々と、鈴を転がしたような可愛らしい声で彼女は告げた。その顔はなんの感情も表さず、やはり作り物めいている。
「ミモザ、ここにいるのでこの屋敷の使用人はすべてだ。滞在中何か困ったことがあれば俺がいない場合はこいつらに聞け」
「わかりました」
 そのやポリ ペプチドりとりは淡々としていてマーサが危惧していたような類の感情は一切感じとれなかった。
「何か質問はあるか?」
 レオンハルトの事務的な問いかけに彼女は少し考えこむと「行ってはいけない場所ややってはいけない禁忌事項などはありますか?」とこれまた事務的な質問を返した。
(なんか思ってたんと違う)
 あまりにも無表情でまるで主人と似たような雰囲気の少女に、マーサは己の危惧を裏切られたにも関わらず落胆した。そこでマーサは初めて自分が来客に対してこの屋敷に新しい風を吹き込んでくれるのを期待していたことに気がついた。
「そうだな、離れには近づくな。それ以外は好きにしてくれてかまわん」
 『離れ』。その単語にぎくりとする。この屋敷の最大の闇とも言うべき場所だ。主人の近寄り難さ、不気味マカ と はさの象徴であると言ってもいい。あそこに何があるか知っているマーサは用事がない限り近づきたくはないが、この屋敷を訪れた人間はあの場所を気にして入りたがる。それも当然だ。秘されれば覗きたくなるのは人の常である。
「わかりました」
 しかし彼女は理由も聞かずにあっさりとそれに頷いた。それが興味のないフリなのかどうか、マーサには判断がつかない。
「あと修行の合間の空いた時間なのですが、ただ置いてもらうのは申し訳ないのでお仕事をもらえませんか?」
「いいだろう。ジェイド」
「はい、旦那様」
 彼女の要望に主人は鷹揚に頷き、呼ばれた蛙男はすっと近づいた。驚いたことに彼女は彼の容姿にもまったく無表情を崩さなかった。
「この子に仕事を教えてやってくれ。そうだな、仕事内容は……、俺の身の回りの世話だ。ミモザ、これはジェイドという。屋敷のことは彼に任せているから仕事は彼から教わりなさい」
「はい。よろし亜鉛 サプリくお願い致します」
 深々と頭を下げる。マーサは主人の発言におやまぁ、と目を瞬いた。人嫌いの主人が身の回りの世話を任せる者は限られている。若い娘にそれをさせるのは初めてのことだった。
 マーサは必死にジェイドに『どういうことだろうねぇ、気になる関係じゃないか』とアイコンタクトを送ったがジェイドはちょっと引いた顔で『は?何?』という顔をするだけだった。それに内心でちっと舌打ちをする。有能な奴だがこういう察しの悪いところがあるのだ、ジェイドという男は。
「ではジェイド、さっそく彼女の案内を頼む」
「はい」
 大抵の若い娘であればジェイドに案内役をふられた時点で大概げんなりとしたり期待が外れたような表情をするのだが、やはり少女は顔色ひとつ変えずに「よろしくお願い致します」と頭を下げるだけだった。

 では頼むと言い置いてレオンハルトは執務室へと戻っていった。
 残されたのはミモザと託されたジェイド、そして自主的に残ったマーサだ。ジェイドは何故いなくならないのかという顔でこちらを見ていたがマーサは素知らぬ顔でミモザへ「マーサと申します」と自己紹介をした。
 ジェイドはそれにため息を亜鉛の効果一つ吐くと「では案内をするぞ」と先頭に立って歩き始める。
「ここが食堂」
「ここが書庫」
「ここが浴室」
 ジェイドは淡々と、そして素早く案内を済ませていく。雑談のざの字もないぶっきらぼうな態度に、しかし少女は特に文句を言うでもなく律儀に頷いていた。
「あそこが離れ。近づくなよ」
「はい」
 マーサは顔をしかめる。離れのことは目にするだけでも少し不快だ。
 そこはわざと人目から隠すように背の高い木で囲まれ、ちょっとした林のようになっていた。背の高い屋根がかろうじて見えるのみで言われなければ離れの屋敷があることなど気づかないだろう。
「で、ここが倉庫」
 ジェイドは遠目に見えるそれからすぐに視線を移し、すぐ近くのこぢんまりとした建造物を指差した。そこまでスタスタと歩いていくとこれまでもそうだったように一応扉を開いて中を見せる。
 ミモザもこれまで同様にひょこり、とお愛想程度に中を覗いていた。
 ふとマーサも習って近づき、目に入った物に思わず顔をしかめる。
「どうされました?」
 ミモザはそれに目ざとく気づいたらしい。マーサの視線を追って、見つけたそれをじぃっと興味深そうに見つめた。
 『それ』。そう、数日前に買い出しに行った際に目にした、レオンハルトの姿が描かれたサプリメント マカ皿である。
「これは……」
 少女は戸惑ったように言い淀み、しかし続きを口にした。
「踏み絵に似た不謹慎さと恐ろしさを感じる代物ですね」
「んっふ!」
 思わずマーサは吹き出しかける。それを呆れた目でジェイドが見つつ「これを食事に使うわけがないだろう」と告げた。
「え?じゃあどうするんですか?」
「本気で言ってるのか?飾るんだよ、棚とか壁に。鑑賞用だ」
「………」
 彼女はなんとも言えないような微妙な表情で首をひねると、その皿を手に取りじっと見つめたまま「夜中に目が合いそうで嫌じゃないですか?」ぼそりとこぼした。
「んっは、ははははは!まぁねぇ、そう思うわよねぇ!」
 今度は笑いを抑えきれなかった。そのままばしばしと自分の膝を叩く。
「でもねぇ、巷じゃお嬢さん方に人気なのよ。ほら、旦那様は格好いいでしょう」
「なんで紙じゃなくて皿に書いてあるんですか?」
「紙に描いてあるもののほうが多いわよ。でもなんでか皿に描いてあるのもあるのよねぇ、なんでかしら?」
 2人でじっとジェイドを見る。彼は嘆息した。
「ただの皿を高く売りつけたい商人の陰謀だ。売れりゃあなんでもいいのさ。刺繍とかのもあるだろ」
「へー」
 ミモザは感心したように頷く。
「でもこれ、ある意味で効能がありそうですね」
「効能?」
 訊ねるマーサに彼女はこくりと一つ頷いた。
「野良精霊も強盗も裸足で逃げ出しそうです」
「んは、んはっはっは!確かに!恐ろしくって寄って来れないかも知れないねぇサプリメント マカ!」
「一体何が恐ろしくって、一体何が寄って来れないって?」
 愉快な気持ちで笑っていると、ふいに背後から声が響いた。聞き覚えのあるその静かで落ち着いた声に、マーサは錆びついた人形のようにぎぎぎ、と振り返る。
「何をこんなところで油を売っている」
「だ、旦那様!」
 不機嫌そうに眉間に皺を寄せて、この屋敷の主人が腕を組んで仁王立ちをしていた。
(ひぃぃぃぃ)
 マーサは内心で悲鳴を上げる。怒っている、ように見える。少なくとも不機嫌ではある。
 ああなんで自分はこんな軽口を叩いてしまったのかと後悔する。この気難しい主人の機嫌を直す方法などマーサはおろか、ジェイドも知らないだろう。
 ちらりと横目でジェイドの様子を伺うと、彼も困ったように脂汗をハンカチで拭いながら「旦那様、こんなところでどうなさいました?」と尋ねた。
 それにレオンハルトは親指で空を指し示す。視線を向けるともう日が傾きかけていた。結構なハイペースで屋敷を見てまわっていたつもりだったが、広いお屋敷だけあって結構な時間が経っていたらしい。
「仕事がひと段落したからな、ミモザに稽古でもつけてやろうと探しに来たんだ」
「それはそれは……」
 ジェイドは揉み手をしながら誤魔化すようにへらりと笑う。普段レオンハルトが不機嫌そうな時は使用人達は極力彼に近づかずにやり過ごしているのだ。レオンハルト自身も使用人達に好んで話しかけたり近づいてくることはない。このような事態は本当に稀だった。
「レオン様」
 その事態をどう見たのかはわからないが、平静な様子の声が響いた。ミモザだ。
 彼女はレオンハルトの注目を引くと手に持っていた皿を掲げてみせた亜鉛 の サプリ
「ん?ああ、なんだこれか」
 その皿を見てレオンハルトは面白くなさそうに眉をひそめる。
「これがどうした?確か試作品だか完成品だかを商人が持ってきたから倉庫に放り込んでいたんだ」
 その言葉を聞いた少女はとととっ、と軽い足取りでレオンハルトへと近づくと、背伸びをしてその耳元へと口を寄せた。レオンハルトもいぶかりながらもその意図を察して少し屈んで顔を近づける。
(おやまぁ)
 その親しげな様子をマーサは不思議な気持ちで見守った。ちらりとジェイドを見ると彼も目を丸くしている。
 そのまま何事かを彼女が囁くと、レオンハルトは微妙そうな顔をして「君なぁ」と呆れた声を出した。
「何を言うかと思ったら、そういう事に興味があるのか?」
 その態度は呆れてはいるが先ほどまでよりもずっと柔らかい。普段の近寄りがたい硬質なそれとも違っていた。
「うーん、興味というか。こういうのがあったらそういうのもあるかなって思いまして」
 少女はレオンハルトのその態度を特別不思議には思わないようで自然なやり取りのように話を続けた。その言葉に彼は渋い顔をする。
「あったらどうするんだ」
 ミモザはレオンハルトの顔を見上げた。
「どうしましょう?」
 そのままこてん、と首を傾げる。
 レオンハルトは盛大にため息をついた。
「まぁたぶんあるんだろうが、俺は知らないし知りたくもない。くだらないことを言っていないで、修行でもするぞ」
 そのままレオンハルトは身を翻して歩き出す。ミモザは慌てて皿を元の位置に戻すと、呆気に取られているこちらに気づき、頭を下げた。
「案内ありがとうございました。一端失礼しますね」
「あ、ああ」
 ジェイドがなんとかそれだけ返した。最後にもう一度頭を下げると今度こそ少女はレオンハルトの背中を追いかけた。
「……おやまぁ」
 マーサは驚き過ぎてそうつぶやくことしかアントシアニンできなかった。

 ちなみにその後に庭で目撃された2人の『修行』の光景の壮絶さに、使用人一同は彼女には優しく接しようと決意を新たにするのであった。
ゴーヤ チャンプルー亜鉛 サプリdha epa亜鉛

 ゴードンは新米兵マカ

 ゴードンは新米兵士である。
 マカ一応精霊使いと名乗れる程度の素養はあるが、塔を5つ目で挫折したたdha epa dhaめ精霊騎士ではない。それでも5つ目の塔まで攻略した実績を評価され、王国騎士団の下っ端として拾ってもらえたのだ。エリートコースを歩むためには精霊騎士になることが必須であるが、田舎の出身で王都で暮らすことを夢見ていたゴードンdhaにとっては食っていける職にありつけただけで上々の人生である。
「壮観だなあ」
 そんな新米で小市民なゴードンにとって、今回のは初めての大規模な任務であった。実に数千人規模の両騎士団を動員した、戦争でも始めるのではといった事件だからだ。
 ゴードンの前方には整然と先輩兵士が並び、そのさらに前にはエリートの精霊騎士達、そしてそのさらに前、先頭にはー
(あれが『三勇』)dha
 我らが王国騎士団団長フレイヤ、教会騎士団団長ガブリエル、そして聖騎士レオンハルトの姿があった。
 ちなみに三勇とは『三人の勇士』の略である。かつては『二将、一勇』や『三英傑』など色々と呼び方を模索したらしいが、一番語呂がよく呼びやすい『三勇』に落ち着いたらしい。やはり語呂は大事だ。
 ゴードンのような下っ端ではレオンハルトはおろか、フレイヤですらお目にかかる機会は滅多にない。
 それが3人揃い踏みなのには当然理由がある。王都周辺で野良精霊の大量発生という異常事態が起こったからだ。それも複数箇所同時にである。アントシアニン
 それなのに何故ここにこんなに戦力が集中しているのか?
 単純に考えれば分隊を大量に分け、各地に派遣すべきと考えるだろう。そして実際に別働隊は存在している。しかし彼らの仕事は精霊の駆除ではなく、住民の避難と精霊の追い込みである。
 今回あまりにも精霊の量が多く、また倒しにくい相手であった。熊型が大量発生したのだ。
 そのため一箇所一箇所殲滅して回るには時間がかかり過ぎた。そこで考えられた案が追い込み漁である。
 幸いなことに大量発生している場所は王都周辺と限られていた。そのため大量発生が起こった一番外側を円の端にしてぐるりと騎士達で囲み、そのまま精霊達をこの何もないだだっぴろい荒野へと追い込み亜鉛 の サプリ、そこで待ち受けて一網打尽にしようということになったのである。ちなみにこの作戦の発案者はガブリエルである。ゴードンは今まで知らなかったが、彼は知将として国内外で有名らしい。
 その時、上空からひらひらと何かが舞い降りてきた。それは2匹の守護精霊だ。
 1匹は黒い羽に銀色の模様の映える美しい蝶。そしてもう1匹は黒く艶やかな装甲をして鋭いツノをもつノコギリクワガタだった。
 その二匹は諜報にでも出されていたのか前方の三勇の元へと飛んで行く。
「お、三勇様の守護精霊だな」
 その時前に並んでいた先輩がつぶやいた。
「確か、団長様のでしたっけ?」
 それにゴードンは声をかける。先輩は目線だけで振り返ると「当たりだ」と笑った。
 ゴードンは当たったことが嬉しくてへへっと笑う。噂で両騎士団団長はお互いが同じ虫型の守護精霊であることが気に食わなくて仲が悪いのだと聞いたことがあったのだ。
「両団長様のだな。おそらく追い込みの調子マカ サプリを確認していたんだろう」
 先輩の言葉を肯定するように、仕入れてきた情報を主へ伝えようと精霊達はそれぞれの騎士団長へと近付いて行った。
 蝶はガブリエルの方へと進み、その姿を美しい鉄扇へと変えた。
 クワガタはフレイヤの方へと進み、その姿をいかついチェーンソーへと変えた。
「ぎゃっ」
 逆だろ!と叫びかけてすんでのところで堪える。しかし、
「いや、逆だろ!!」
 口を手で押さえるゴードンの背後から声が聞こえた。振り返るとそこには指差して叫んでしまったと思しき同僚の姿があった。彼は先輩に頭を引っ叩かれ、逆にゴードンはこらえたことを褒めるように先輩に頭を撫でられた。
(あとであいつに声かけに行こ)
 友達になれる気がする。
「ぼさっとするな、来るぞ」
 他の先輩が促す。それとほぼ同時に地響きのようなものが始まり、そして姿を現した。
 大量の熊型の野良精霊である。
 そのあまりの多さに、みんなわずかに怯んだようだった。しかし、
 ごうっ、と風の燃える音がした。
 レオンハルトだ。
 彼が巨大な剣を一振亜鉛 サプリ おすすめりすると、そこから炎を纏った斬撃が放たれ、それは徐々に範囲を広げながら熊達を焼き切った。あまりの高温ゆえに、おそらく斬撃に触れた場所が蒸発したのだ。
 胸から上を失った熊達が無惨に倒れ伏す。
(すげぇ……)
 なんと彼はその一振りでたどり着いた第一陣をすべて焼き払ってしまった。
 まさに一騎当千。
(これが、聖騎士)
 これが最強の精霊騎士か、と感嘆すると同時に畏怖の念が湧く。
 味方ならこんなにも心強いが、もしも敵対することがあればと思うと冷や水を浴びせられたように体が一気に冷たくなり震える。
「聞け」
 その時声が響いた。ゴードンは弾かれたように顔を上げる。
「これは皆のための戦いである。家族や友、そして愛すべき国民を危機に晒してはいけない」
 けして叫んでいるわけでないのに、大きくよく通るレオンハルトの声が響く。
 その言葉にゴードンははっ、と我に返る思いがした。そうだ、守りに来たのだ。自分の想像に怯えている場合ではない。
「皆の者、俺に続け。必ず勝利を掴み取るぞ」
 オオオォォォッ!と雄叫びが上がった。ゴードンはもう、畏怖にとらわれてはいなかった。
 陽の光に照らされて、英雄の藍色の髪がきらりとひらめく。その横顔は凛々しく、金色の瞳は未来を見据えている。
 勝利という未来サプリメント マカを。
 そう信じるには充分過ぎて、ゴードンは胸を熱くした。
 そう、ゴードン達はこの手で必ず国民を守るのだ。
ゴーヤゴーヤ チャンプルークロムの効能

 第3の塔はdha

 第3の塔は高い岩壁に囲dha epaクロムれるようにしてぽつんと立っていた。それゆえに岩山を登るか洞窟を通るしか辿り着く手段がないのだ。周囲にはごつごつとした岩が転がっている以外は特に何もない。第3の塔は薄汚れた灰色をしていて周囲と色合いが同化してしまっていた。亜鉛 サプリ おすすめ他の塔もそうだったがとても中に広大な空間が広がっているとは思えないようなちゃちな外観だ。そしてその塔のたもとには入場手続きを待つ人々が列をなしており、何故かそこから少し外れた位置にステラとアベル、そして見知らぬ少女が立っていた。
「あ、あれ、ミモザさんのお姉さんですよね」
「しっ!」
 ぽけっと指差すジーンを手で制して近くにあった岩の影へと隠れる。
「何してるんですか?」亜鉛 サプリ おすすめ
「いいですか、ジーン様。ジーン様はご存じないと思いますが僕と姉は不仲なのです。そして先日とうとう決別宣言を致しました」
「決別宣言……」
「僕が一方的に」
「一方的にって……」
 ジーンは呆れたように嘆息する。
「何があったかわかりませんが、兄弟喧嘩はほどほどで仲直りしておいたほうがいいですよ。今後も顔を合わせる機会があるんですから」
「兄弟喧嘩だけならそのご意見は一考の余地があるんですけどね」
 これまでの色々な事情をジーンに説明する気はミモザにはない。面倒臭いからである。
「まぁ、放っておいてください。あ、もし塔に行かれるのでしたら僕の存在は伏せdha epa dhaてくださいね。僕は顔を合わせないようにここで少し待ってから行きますんで」
「はぁ……」
「お願いします!!」
 その時、何かを言いかけたジーンの声を、少女の声が遮った。見ると何やら彼女はステラとアベルに頭を下げている。淡い赤毛をおさげにした可愛らしい少女はその目に涙を浮かべていた。
「……なんでしょう」
「さぁ?」
 ミモザとジーンはその光景に首をひねる。見守っているとステラは周囲の人々の迷惑にならないように慮ったのか、少女を手招くとなんとミモザ達の方へと移動してきた。
「うえっ」
「ちょっと!」
 思わず慌ててジーンの手を引くと一際大きな岩の裏へと引っ張り込んだ。ジーンは非難の声を上げたが知ったことではない。
(あぶねぇ)
 どきどきと動揺する心臓をなんとか落ちクロムの効能着かせていると、よりにもよってステラ達はミモザ達の隠れている岩の前で足を止めた。
「ここなら大丈夫ね」
 もう一度入場手続きをしている人々を見てステラは言う。それに一体なんの話だと疑問に思いながらミモザは聞き耳を立てた。
「それで、どういうことなの?お願いっていうのは?」
「お姉さん達、これからあの塔に入るんでしょ?」
 意を決したように少女は話し出す。小さな拳をギュッと握り、その肩には緊張したように力が入っていた。
「薬草を、取ってきて欲しいの」
「どうして?」
 不穏な会話だ。ミモザは眉をひそめた。しかし会話はミモザの心境など無視して進む。
「お母さんが……、病気なの。その病気を治せる薬がここにしか生えてないって……」
「お薬を買うお金がないの?」
 彼女は勢いよく首を横に振る。
「あるよ!でも……」
 確かに言葉の通り、少女の着る服の生地はしっかりとしていて上等な物のように見えた。薬代が払えないほど困窮しているよゴーヤうには見えない。彼女は唇を噛み締める。
「お薬がないの。数がとても少ないんだって。だからずっと順番待ちで……。お医者様はすぐに容態が悪くなることはないから大丈夫だって言うけど……っ」
 そこでぐすっ、と少女は鼻を鳴らした。ミモザからは角度的によく見えないが、泣いているようだ。 
 ステラは少女を安心させるように微笑むと、地面に膝をついて目線を合わせ、彼女の背中を優しく撫でた。
「そうなの。それでここまで来たのね。頑張ったわね」
 泣きながら少女はうんうんと頷く。
「頑張ったのっ、ここに来るために第2の塔にも行って……っ」
 そう言って少女が見せた右手の甲には銀の花弁がついていた。
「………」
 ミモザは思わず遠くを見つめる。あんないたいけな女の子が銀の祝福を持ってるというのに、みっちりと3年修練を積んだはずのミモザはといえば……、
「あっ、だめだ。心が折れそう」
 ブロークンハートである。
「まぁ、祝福のランクが全てじゃありませんから」と右手の甲が銀色の花弁できらきらしているジーンが慰めるように言った。
 思わずその額をデコピンする。
 ジーンが無言で悶絶するのにちょっと溜飲を下げて、ミモザは改めてステラ達の様子を伺った。
(まさか、引き受けたりしないだろうな……)
 ゴーヤしかしそのまさかは起こった。
「わかったわ」 
 ステラは頷いた。
「本当!?」
 少女は顔を輝かせる。それにステラは微笑むと、目を合わせてしっかりと頷いた。
「大丈夫よ、お姉さん達が薬草を取ってきてあげるからね」
「あ、ありがとう!!」
 少女は感激したようにステラの手を握る。
(うええ……)
 頭がくらくらする。ミモザは思わず後ずさってしまった。
 じゃりっ。
 一歩足を引いただけなのにその音は嫌に大きく響いた。
「誰だ?」
 アベルが不審そうに誰何する。彼は警戒するように守護精霊を剣へと変えて、こちらへ向けた。
 ちっ、と小さく舌打ちをする。本当なら見て見ぬふりをして逃げてしまいたかったが塔に行くにも帰るにも、姿を見せずに移動するということは困難だ。何より下手な行動をしてアベルに不審者と間違われて攻撃を受けるのはごめんだった。
「僕だよ」
 声をかけて両手を降参するように上げるとミモザは岩影から姿を現した。
アントシアニンの効果アントシアニンの効果ゴーヤ

 それが起こったゴーヤ

 それが起こったのは、ある意味必然であった亜鉛 サプリのかも知れない。なにせ予兆はあり過ぎるほどにアントシアニンあった。
 しかしすべての災難は最悪なことに同時に訪れたのだ。
「どういうことです?」
「そのままですよ。困ったことになりました」
 連絡を受けてかけつけたレマカオンハルトとミモザに、沈痛そうに額に手を当ててオルタンシアは言った。
「立てこもり事件と野良精霊の大量発生が同時に起きました」
 息を飲む。二の句が継げないミモザに代わり、レオンハルトは「立てこもり事件というのは?」と尋ねた。それに教皇は無言である手紙を差し出す。それはとても丁寧な犯行声明であった。

『第4の塔に長期滞在致します。大人7名、子ども3名、計10名にて実施いたします亜鉛。試練の塔被害者遺族の会』

「閉鎖しないのならば立てこもりを止める権利はない、といいたいのでしょう。まぁ実際、入場資格のある者が何日間滞在しようと規制するルールは存在しません」
「いや、大人はともかく子どもはだめってルールだったはずでしょう」
 ガブリエルがうめく。それにオルタンシアは力なく首を横に振った。
「入場管理を担っている人間を脅しつけて無理矢理入ったようです。厄介なのはここで彼らに死者でも出ようものならこちらの管理責任が問われることです」
「なアントシアニンの効果ぜ急にやり方を変えたのでしょう?」
 フレイヤが尋ねる。確かに、コラムを書いて人々の同情を引こうという最初の手段からは、随分とかけ離れた強引な方法であった。
「先日の…、レオンハルト君の件が効いているのかも知れません。彼女はレオンハルト君を取り込むのに失敗しましたから」
「それにしてもあまりにも手段のベクトルが違いすぎる」
 レオンハルトの訝るような言葉にミモザも無言で頷いた。最初の戦略はなんとも慎重で自分たちに利があるように上手く立ち回っている印象だったが、今回の件はあまりに強引すぎておそらく被害者遺族の会に世間はマイナスのイメージしか抱かないだろう。
「仲間割れ、でしょうか?」
 首をひねるミモザに、亜鉛 サプリレオンハルトは「そうだな」と思案した。
「少なくともジェーンを影で操ろうという人間が2人以上はいるのかもしれない。彼らはそれぞれ意思の連携ができていないか、片方が功を焦りすぎたか」
「どちらにしろ重要なのは、このような自分自身を人質として盾にするようなテロリズムに我々は屈するわけにはいかないということと……」
 オルタンシアは首を振る。
「野良精霊の討伐のほうが優先事項であるということです」
 確かに自らの意思で危険に飛び込んだ者と、なんの落ち度もないのに危ない目に遭いそうな者ならば、後者が優先して守られるべきだろう。
「野良精霊の方に王国騎士団、塔の方に教会騎士団で分担してーー」
「というわけにもいかないのです」
 オルタンシアは眉間を押さえる。
「現在だけでも野良精霊の被害が10ヶ所以上で報告されていて数は増える一方です。両騎士団一斉にことにあたっても被害アントシアニンの効果をすべて食い止められるかどうか……」
 レオンハルトも難しい顔で腕を組んで考え込んでいる。ミモザはちらりと教皇の執務机の上を覗き見た。王都周辺の地図に赤い印がばらばらと点在している。これら全てが野良精霊の大量発生箇所だとしたら、確かにとても人手が足りないだろう。
「ミモザ君、行ってくれませんか?」
 ふいに声が響いた。オルタンシアからの急な名指しにびくりと震える。
「え?」
 その顔をまじまじと見つめるが、彼は真剣な表情を崩さない。
「両騎士団長は指示を出さねばなりませんから言わずもがな、レオンハルト君の戦力は野良精霊の方に必要ですし、英雄がテロリストの命を優先することははばかられます。しかし彼らを放置するわけにはいかない。ですから塔の方はミモザ君、君に任せられませんか?」
「……それしかないか」
 レオンハルトも難しい顔でそれに同意した。
「ミモザ、別に解決する必要はない。ただすべてを片付けて俺が駆けつけるまでの時間を稼いでくれ。第4の塔ならばお前の実力でなんとかなるだろう」
「はぁ、わかりました」
 つまりミモザは彼らのサプリメント マカ用心棒をして待っていればいいのだろう。いくら塔の中が危ないとはいえ試練に挑むわけではない。能動的に動かなければ危険も少ないはずだ。
「それなら、僕も行きます」
 手を挙げたのは爽やか少年ことジーンだった。
「戦力は多いに越したことはないでしょう」
(うーん…)
 その言葉にミモザはレオンハルトの顔を見る。彼は無言で首を横に振った。薄々わかってはいたが、どうやらレオンハルトは基本的に教会寄りのスタンスらしい。
「申し訳ありませんが……」
 案の定、オルタンシアは申し訳なさそうに首を振る。
「なぜですか!」
「塔の一度に入れる入場人数には制限があるのです。第4の塔は12人が上限です。これは我々が決めたものではなく塔がそれ以上の人数を拒絶するのです」
「なら僕もぎりぎり…」
「1人は連絡役に残しておきたいのです。中の状況が全く確認できなくなるのは困りますし、必要に応じて物資なども運ぶ必要が出るかも知れません」
 ジーンは悔しそうに歯噛みした。
 嘘ではないだろうがそれだけが理由ではないだろう。塔は教会の管理である。ミモザは教会寄りのレオンハルトの弟子だからいいのだろうが、王国騎士団団長の弟子の手を借りたくはないのだろう。それは国に借りを作ることと同義であるし、下手をすれば塔の管理について余計な横やりを入れられdha epaかねない。
 塔は金の卵を産む鶏のようなものだ。そのほとんどが塔の管理と維持費に消えるにしてもそこそこの収益にはなっているだろうし、なにより教会としては宗教的価値のある塔の利権を手放したくはないだろう。
「では、ジーンを連絡役にしましょう」
 その時フレイヤが強い口調で提言をした。王国騎士団側としてもこのような機会は見過ごせないらしい。
「ジーンならばいざとなればミモザちゃんと協力して戦えますし、王国騎士団に所属しているわけでもない。適任ですわ」
 名案と言わんばかりに花のようににっこりと笑うフレイヤに、そこが落とし所と考えたのだろう、オルタンシアは「では、お願いしましょうか」と苦笑した。
「ただし、君はあくまで連絡役です。それ以上のことは越権行為ですよ」としっかりと釘を刺すことは忘れなかったのはさすがである。
マカ サプリdha epa dha亜鉛 の サプリdha epa

 記者達がす亜鉛の効果

 記者達がすし詰ゴーヤめ状態になりアントシアニンの効果ながらも、その姿を絵と文字に写すために必死に筆を走らせていた。その中心にいるのはオルタンシア教皇聖下とレオンハルトである。
 ここは中央教会の中庭である。ミモザはその光景を教会の回廊の柱の陰からこっそりと覗いていた。

 あの時、決サプリメント マカ着は一瞬でついた。
 ロランの雷とレオンハルトの炎のぶつかった光が収まると、そこに立っているのはレオンハルトであった。
「うぐぅ……」
 ロランは苦しげにうめきながら、しかしまだ抗おうとなんとか手で地面をつかみ、膝を立てる。
「やめておけ」
 レオンハルトはそんな彼に近づくとその首筋へと刃を突きつけた。
「そのていたらくでは抵抗するだけ無駄だ。貴方には色々と聞きたいことがある。ご同行願おう」
 その瞬間マカ と は、ロランはニヤリと笑い自分の胸元へと手を伸ばし、ーーその手をレオンハルトに蹴りつけられて仰向けに転がった。
 すかさずそれ以上動けないようにレオンハルトがロランのことを押さえ、胸元を探る。
「レオン様」
「どうやら自爆装置のようだな。小規模だが爆発物が仕掛けられている」
 息を呑む。すぐにレオンハルトはその装置の動力と思しき魔導石を取り除き、ロランを昏倒させた。
「よくやった、ミモザ。謎の多い保護研究会の一員を捕獲できたのは大きな収穫だ」
「死傷者はその方を除けば0名です」
「素晴らしい」
 レオンハルトが立ち上がる。褒めるゴーヤようにミモザの肩を叩いた。ミモザは先ほどまで背にかばっていた3人を振り返る。3人とも惚けたような、本当に終わったのか疑うような表情で立っていた。
 ミモザも同じ気分だった。

 そして本日、いろいろな事について世間への報告が一通り済み、後始末が終わったあとで会談が行われることになった。
 一体誰と誰の会談か。答えは簡単だ。
 教皇聖下ならびにレオンハルトと被害者遺族の会の代表との会談である。
 今はその前座として、彼らはレオンハルトの用意した『ある物』を見に来ていた。
「これは……」
 その『ある物』を見て、ジェーンはそれ以上何も言えずに立ち止まる。
 レオンハルトは風を切って歩くと、その『ある物』の目の前でかしずいた。
 それは慰霊碑だった。巨大な白い大理石が天高く伸び、ゴーヤそこには細かく何事かが刻まれている。よくよく見るとそれは人の名前のようだった。数えきれないほどの数の人の名前が刻まれ、そして少しの空白の後、その勇敢さを讃えると共に安らかな眠りを祈る言葉でその文字列は締め括られていた。
 塔の試練で命を落とした者たちの名前が刻まれているのだ。
 レオンハルトは慰霊碑へと向かい何事かを静かに伝え、そして手に持っていた白百合の花束をそこへ丁寧に供えた。
 そうして立ち上がるとジェーンを振り返る。
「どうかジェーン様もこちらへ。…手を合わせていただけませんか」
「これは……、これは、どういう……」
「申し訳ありません」
 神妙な顔でレオンハルトは謝罪した。
「彼らは俺の救えなかった方々です。魂を鎮めるために、そして俺の力不足を忘れないために、名を刻ませていただきました」
 力無く首を横に振る。
「彼らは本当なら、今頃俺たちの同僚となっていたはずの勇敢な騎士達です」
 その言葉にジェーンは、ハッと顔を上げたゴーヤ チャンプルー。レオンハルトの方を見ると、彼は悔しげな表情を隠すようにうつむく。
「彼らの死を、悔しく思います。もちろんエリザさん、……貴方の娘さんの死も」
「ああ……っ!」
 ぼろぼろとジェーンは涙を流した。その口は小さく動き、「エリザ、エリザ」と娘の名を呼んでいるのがわかる。その泣き崩れる背中をレオンハルトは無言で支えた。
 長い時がかかり、やっとジェーンは顔を上げた。その目は真っ赤に腫れている。その間ずっと急かすこともなく背を支えていたレオンハルトに手を取ってもらい、彼女はやっとのことでその慰霊碑の前へとたどり着いた。そのままゆっくりとうずくまるようにこうべを垂れる。その手は合わされ、祈りを捧げていた。
「ありがとうございます、レオンハルト様」
 やがて、ぽつりと声が落とされた。
「ありがとうございます。ありがとう、ごめんなさい、ごめんなさい……」
 再び泣き崩れるジェーンのことを、報道陣からかばうようにレオンハルトが肩を支え、教会の中へと導いた。
 その様子をしっかりと記者達は絵に描き、文字に起こしているようだった。

「たいしたパフォーマンスだね」
 ふいにミモザに話しかけてくる声があった。振り返亜鉛 サプリ おすすめった先にいたのは新緑の髪に深い森の緑の瞳を持つ青年、マシューだった。
「ええと…」
「マシューだよ」
「マシュー様」
 ミモザのそんな様子に諦めたようにため息をつき、「別にいいけどね、緊急事態だったし、僕は裏方だし?」とマシューはぶちぶちと言う。
 一通り愚痴って満足したのか、こちらを真っ直ぐに見つめると、彼は頭を下げた。
「申し訳なかった」
「あの…?」
「やり方についての指摘はごもっともだった。あれは最低な行為だ。今後はもうしない」
「してもいいですよ、別に。言ったでしょう、僕も悪いことをする人間です」
「しない。もうそう決めたんだ」
 何かを切り捨てたような顔で彼は言った。何かを失ったようなのに、その表情はどこか清々しい。
「でも塔の運用に関しては、もっと改良できると思ってる。だからこれからも活動はするよ。今度は正攻法で、もっと視野を広げた現実的な案を模索する」
「……はぁ」
 正直それを自分に言われても、とミモザは困る。眉を寄せるミモザのことをマシューは軽く睨んだ。
「でもまぁ、あんたも大概酷かったから、お互い様だとは思ってるよ」
「そうですか」
 はぁ、とマシューはため息をついた。
「あんた、つくづく俺に興味ないのな。まぁいいや」
 じゃあな、とマシューは踵を返す。ジェーンの元に向かうのだろう。彼は作戦参謀のはずだ。
 ああ、と言い忘れたことがあることに気がついて、ミモザは「マシュー様!」と呼び止めた亜鉛
「パフォーマンスじゃありませんよ」
「え?」
「さっきの」
 慰霊碑を示してみせる。
「あれは儀式です。ご家族の死に向き合うための」
 本当にあれで向き合えたかどうかは知らないが、それなりに効果のありそうな反応ではあった。
 マシューはミモザの言葉にわずかに目を見張ると、「そうかよ」と頷いた。
「なら、俺もあとで拝んでやってもいいかもな」
「ぜひ、どうぞ」
 ミモザは微笑んだ。
「他の仲間の方々もぜひ、ご一緒にお越しください」
 教会の中庭にある慰霊碑だ。訪れるだけで自然と交流が生まれるだろう。
 人は『顔見知り』には優しくなるものである。
 これは教会と被害者遺族の会が『なあなあな関係』になる足がかりになるだろう。

「なに?」
 その報告にレオンハルトは不機嫌そうに眉をしかめた。報告に来た騎士はびくりと身を震わせる。
「それは確かなのですか?」
「は、はい!」
 オルタンシア教皇の問いかけに、彼は頷く。
「今朝未明、保護研究会過激派の幹部を名乗る老人の姿が、牢の中から忽然と消えました。おそらく……」
 騎士は緊張と畏怖でひりつく口内を少しでも潤すように唾を一つ飲み込んだ。
「脱獄したものと思われます」
 その瞬間放たれたレオンハルトの威圧感と怒気に、年若い騎士は失神してしまいたいと切に願った。
マカ と はアントシアニン亜鉛の効果亜鉛 の サプリ

 テーブルのdha epa

 テーブルの上では燭台の橙色の柔らかい灯ゴーヤ チャンプルーりと暖色系でまとめられた花が水差しへと生けられて穏やかな晩餐会を彩っていた。マカ と は
 さて、ミモザという少女がレオンハルト邸を訪れて数日が過ぎようとしていた。今までほとんど来客がなく一人しか卓を囲むことのなかったテーブルに二人の人物が腰掛けるようになって数日、マーサは今だに不思議な気亜鉛持ちでその光景を眺めていた。
 テーブルを囲って初日、少女は神妙な顔をして挙手した。いわく「テーブルマナーがわかりません」。
 主は一瞬虚を突かれたような顔をした後、「礼儀作法の教師を雇おう」と告げてその会話を終わらせた。恐縮する少女に「今後弟子として同行してもらうことが増える。その際にマナーがわからないようでは俺が恥をかく」と言い置いて。
 二人の間の会話は決して多くない。まぁ、『レオンハルトとの会話量』アントシアニンの効果としては少女はぶっちぎりで多いのだが、一般的なものと比べると少ない方である。しかし二人の間に流れる空気は気安く、とても穏やかなものだった。
 これまでは食事などただの作業だと言わんばかりの速度でマナーは守りつつ食事をさっさとかき込んでいた主人が、今は少女のたどたどしいゆっくりとしたペースに合わせて食べている。気にしていない風に特に何を言うでもないが、同時に食べ終わるようにワインや水を頻繁に口に運んでみたりゆっくりと咀嚼したりと無言で工夫を凝らしている様子は見ていて微笑ましい。そしマカて少女がどのくらい食べ進んだのかを確認する際に彼女がその視線に気づいてにこりと小さく微笑むと、彼は困ったように苦笑を返すのだった。
 ミモザが訪れてまだ数日であるが、これまでただ重苦しく張り詰めていた屋敷の空気が柔らかいものへと変わりつつあった。

(何よりも旦那様の機嫌が良い)
 うんうん、とマーサは上機嫌で頷く。機嫌が良いのはいいことだ。それだけで職場の雰囲気が格段に向上する。よしんば機嫌が悪くともミモザと話していれば今までよりも遥かに短い時間で直るのだ。これには感謝の言葉しかない。
「ずっと居てくれればいいですよねぇ」
 マーサの内面を代弁するように、一緒に廊下の掃除をしていたロジェが言った。燃えるような赤い髪にブラウンの瞳を持つ彼女は古株だらけのこの屋敷に置いゴーヤ チャンプルーて貴重な若者だ。ぴちぴちの20代の彼女は、彼女いわく「ぞっこんなダーリン」がおり、レオンハルトへ秋波を送ることのない貴重な人材であった。
「ひと月しかいないみたいだねぇ」
 残念に思いため息を吐く。
「えー、延ばさないんですかねぇ、延長、延長!」
「そんなことできるわけがないだろ。まぁ、また来てくれるのを祈るしかないねぇ」
 たしなめつつも「はぁ」とため息が出る。一度良い環境を味わってしまうとこれまでの状態に戻るのが憂鬱でならない。
 その時可愛らしい鼻歌が聞こえてきた。鈴を転がしたようなその明るい声は、ここ数日で聴き慣れたものだ。そちらを向くと廊下の曲がり角から予想通りの人物が姿を現すところだった。
「ミモザ様ぁ、おはようございますぅ」
 ロジェがぶんぶんと手を振って挨拶する。孤児院育ちの彼女は少々お行儀の悪いところがあった。
 その声に少女は両手いっぱいに花を抱えて振り向いた。金糸の髪がさらりと流れ、青い瞳が優しげに微笑む。
「おはようごアントシアニンの効果ざいます。ロジェさん、マーサさん」
 その可愛らしい救世主の姿にマーサとロジェはほっこりと微笑んだ。
「毎朝せいが出ますねえ」
 手に持つ花束を示して言うと、彼女はああ、と頷いた。
「暇ですからね、わりと」
 これも彼女が来てからの変化だ。殺風景で飾り気のなかった屋敷に彼女は庭から摘んだ花を飾って歩く。最初は食卓の一輪挿しからじわじわと始まり、気づけば廊下から執務室までありとあらゆる場所へとそれは入り込んでいた。
 屋敷に勤める女性陣には大好評である。これまでそういったことをしたくても出来なかったのだ。主人に直談判する勇気が誰もなかったからである。しかし彼女は違う。ミモザはこれまで誰もなし得なかったことを何かのついでにひょいと「花飾っていいですか?」と聞いてあっさり許可をもらった猛者である。
「ミモザ様はぁ、お花がお好きなんですかぁ?」
 ロジェがにこにこと訊ねる。それにミモザは「いやぁ、特にそういうわけでは」と意外な返事を返した。
「そうなんですかぁ?てっきり毎朝飾られているのでお好きなのかとぉ」
「そうですね。これは好き嫌いというよりは……」
 真剣な顔で彼女は言った。
「お花を飾ると家の運気が上が亜鉛 サプリるので」
「運気」
「はい。運気です」
 曇りなきまなこである。
(まぁ、ちょっとオカルト?が好きな子みたいよねー)
 別に害はないのでマーサとしてはどうでもよかった。
「あのぅ、実はお願いがあるのですが」
 ミモザはちょっと困ったように言う。屋敷を訪れてすぐの無表情はなりを潜めている。緊張していたのだとは本人の談だが緊張しているのが周囲に見た目で伝わらないのはなかなかに損な性分だなと思う。
「どうしたんだい?」
 ミモザはもじもじと恥ずかしがりつつ「今日、レオン様は外出らしくて……」と言った。
「一緒に昼食をとってもいいでしょうか?」

 彼女の位置付けは微妙だ。お客様ではないが使用人でもない。主人の弟子として修行をし、家庭教師などから教育を受けているが、使用人としての仕事も少しこなしている。
 つまり彼女の「仕事の先輩方と仲良くしたい」という希望は的外れではないが、おかしな話でもある。
「ーで、連れてきたのか」 
「まぁ、断る理由がなくてねぇ」
 不機嫌そうにジェイドが言うのにマーサは肩をすくめた。
「ふん、まぁいい、わたしは知らん」
 ふん、と顔をそらして使用人の控室であり、食事を取るテーブルの一番隅へとジェイドは腰掛ける。手にはもう昼食のプレートを持っていた。
 そこにミモザが昼食のプレートを持って現れた。彼女はキョロキョロと室内を見渡すとジェイドのちょうど正面の席へと腰を落ちマカ と は着けた。
「なんでここに座る!?」
 ぎょっとしたようにジェイドが立ち上がる。
「え?」
 ミモザは不思議そうだ。
「またやってら」
 庭師のティムが呆れたようにそれを見てぼやいた。
 そう、何故だかミモザは蛙男ことジェイドに非常に懐いていた。
「席は他にいくらでも空いとろーが!!」
 ミモザはきょとんと「そうですね」と頷く。
「なら!何故!ここに座る!」
「すみません、誰かの指定席でしたか」 
 しぶしぶと立ち上がるのにロジェが「指定席とかないからぁ、大丈夫よぉ」と教えてあげる。その言葉に彼女はきょとん、としてから再び腰を下ろした。
「座るな!」
「でも誰の席でもないと…」 
「わたしが嫌なんだ!!」
「何故ですか?」
 首をひねるミモザに、ジェイドはびしっと指を突きつけた。
「いいか、わたしはな!顔のいい奴が大っ嫌いなんだ!」
 非常に大人げない理由だった。
「ジェイドさん」
 ジェイドのその言葉にミモザは珍しく少しむっとした表情になる。
「な、なんだ」
 自分からふっかけておいてジェイドは怯む。その顔をじっと見つめながらミモザは「僕、そういうのはよくないと思います」と唇を尖らせた。
「はぁ?なんだと?」
「人の容姿をどうこう言うのは不謹慎です」
「褒めてるんだろうが!」
「でもジェイドさんはマイナスの意味でそう言っています」
 その指摘にジェイドはうっと言葉を詰まらせる。
「褒めてません」
「うっ」
 じぃっと恨みがましい目で見られるのに彼はたじろいだ。
「ミモザ様はぁ、なんでジェイドさん好きなのぉ?」
 ロジェが助け舟マカを出す。ミモザの視線はロジェへと移った。
「優しいからです」
「はぁ?優しくした覚えなど!」
 しかし返された答えにジェイドは思わずといった様子で声を上げた。再びミモザの視線がジェイドへと戻り、ジェイドは嫌そうに身を引く。
「確かにジェイドさんは大きな声を出します。でも理不尽な暴力を振るったりはしません」
「当たり前だろうが!」
「当たり前ではありません」
 そこでミモザは憂鬱そうに目を伏せた。
「嫌そうな態度は取ります、けれど僕の人格を否定するようなことは言いません。面倒だとは言います、しかし要領の悪い僕に何度も根気強く仕事を教えてくれます。あなたは優しい。だから……」
 顔を上げる。冬の湖のような静かな瞳がジェイドを見つめた。
「だから僕がつけあがるんです」
「つけあがるな!」
 ジェイドはふーふー、と肩で息をする。それを見つめつつ彼女は説明が足りなかったと思ったのか、考え考え言葉をつけたした。
「僕、修行を始めてからマッチョになりました。そのおかげで少し自信がつきました。僕はこれまで、何も言いませんでした。ずっと何も思ったことを言わず、そのくせ周りに期待をしていました。察して欲しいと、自分は何も行動しないくせに」
 そこまで言って、「んー」とまた言葉を探す。
「だからこれからは、少しずつ思ったことを言おうと思ってます。僕は、貴方が好きです。人間として、仕事の先輩として、尊敬しています」
「わたしはお前が嫌いだ!」
 ジェイドの喚くような返答に、ミモザの表情は変わらなかった。ただ無表情に、ジェイドを見つめている。
 それにちっ、とジェイドは舌打ちをした。
「お前、そう言う時は落ち込んだそぶりで涙でも流してみろ。それだけでお前の容姿なら同情が引ける。クロムの効能不器用な奴め」
 そう言い捨てるとそのまま席について食事を始めた。
「一緒に食事をしてもいいですか?」
「好きにしろ、お前がどこで食べようとわたしは知らん」
 にこ、とミモザは笑った。
「僕ジェイドさんはツンデレだと思うんですけどどうですかね」
「ツンデレが何かは知らんがろくでもないことを言ってるだろうお前!なんでも素直に口にすればいいと思うなよ、小娘!」
 えへ、とミモザは花が綻ぶように笑った。
亜鉛の効果ポリ ペプチド亜鉛 サプリマカ と は